

公益社団法人福島青年会議所
第 63 代 理事長 谷口 隆治
はじめに
青年会議所の本懐とは何か―。それは、運動の展開に他なりません。われわれが目指すものは単なる賑やかしやイベントの実施ではありません。地域の人や団体の意識と行動を変え、明るく豊かな社会の実現に寄与することが私たちの使命であり、存在意義です。運動とは地域に対する提言であるべきものです。
しかし、他者の意識や行動を変えることは決して容易ではありません。だからこそわれわれは、共感と納得を生む効果的なアプローチを構築するために、地域に目を向け、自らに問い続けなければならないのです。「なぜこの運動が必要なのか」「なぜ今この課題に取り組むのか」。地域に真正面から向き合うことが、いつまでもわれわれの出発点であるべきなのです。
運動の目的は、意識や行動を変えたい明確なターゲットを定め、具体的な変化を生むことにあります。そしてその先に、少なくとも一つの地域課題が解決されている状態を提示できなくては、私たちの行動は自己満足に終わってしまいます。この厳しくも真っ当な原点を忘れることなく、覚悟をもって運動に取り組みます。
東北青年フォーラムの誘致に向けて
福島青年会議所は 2027 年に東北青年フォーラムの誘致を計画しています。本フォーラムは、東北各地の青年会議所メンバーが一堂に会して連携と学びを深める貴重な機会であり、非常に大きな意義を持つものです。
われわれはこの誘致を、単なる大規模事業の実施にとどめることなく、一人ひとりのメンバーがまちの現実と真摯に向き合う契機にしたいと考えております。フォーラムを通じて地域の今を見つめ直し、課題を発見し、当事者意識を持って行動へつなげる機会とします。
また、開催地のふくしまには大きな経済効果が期待できます。東北地区協議会に所属する 70 青年会議所総勢約 2,100 人の同志のうち、少なくとも 1,000 人以上の参加を目標に掲げ、当地の魅力を余すところなく発信してふくしまのファン作りにもつなげます。
青少年の心身の健康の増進に向けて
福島県内では子どもたちの運動不足が顕著となっています。また、デジタル機器の普及も相まって、現代の子どもたちは体力、集中力、我慢強さが以前より低下しているとの指摘もあります。
こうした子どもたちに心と体の両面でたくましい成長を促し、勝敗に関わらずに相手を敬う姿勢や礼儀作法を身に着けてもらうため、2026 年度もわんぱく相撲福島県北場所を開催します。
日本の伝統文化に触れながら仲間と共に汗を流す経験は、これからの人生を支える大切な礎となることを確信しております。
国際の機会を中心とした青少年への多様な価値観の提供
近年、ふくしまにおける在留外国人の数は緩やかに増加しており、インバウンド観光も過去最高の水準に達しています。しかし、全国的な伸び率と比較するとその勢いは控え目であり、ふくしまの国際的な環境は依然として限定的であると言わざるを得ません。
だからこそこの地域において、青少年が国際的な視野を育める機会を意識的に創出していく必要があると考えております。子どもたちが異なる文化や価値観に触れることは、他者を理解し、多様性を受け入れる感性を養う上で欠かせません。そしてその経験は、広い視野で人生を選び、自ら課題を発見し、解決していく力につながっていくものです。
私たち福島青年会議所は、これからの地域と世界をつなぐ担い手を育むべく、青少年が多様な価値観と出会うための機会づくりに取り組みます。
古里のシンボルを活用した地域の魅力向上に向けて
福島市の中心にそびえる信夫山は、住民生活や市の伝統文化と結びついた地元のシンボルです。信夫山の豊かな自然の維持と魅力の発信は、われわれの身近な価値を守り、地域の資源を次の世代へつないでいくことにつながります。
福島青年会議所がこれまでに 13 回実施してきたパークランニングレースは、信夫山を核とした地域発展の取り組みとして広く定着しており、2026 年度も継続して開催します。また、行政や各種団体との連携を一層強め、より効率的かつ効果的な実施の在り方を検討していきます。
まちに賑わいを取り戻すために
JR 福島駅の東口、西口それぞれで誘客をけん引してきた施設が相次いで閉業し、中心市街地の空洞化が顕在化しています。市民が日常的に行き交い、地域外からの来訪者を迎える駅周辺のにぎわい喪失は、地域経済の停滞だけでなく、都市としての魅力や活力の低下を招きかねません。中心市街地に人の流れを生む取り組みが求められています。
にぎわいは、地域の価値や魅力を共有し、育てていく中で生まれるものです。ふくしまの未来のために、われわれにできることは何か。これまで以上にまちの現場に足を運び、声を聞き、仲間とともに試行錯誤を重ねながら、にぎわいと活力を取り戻す取り組みに尽力します。
ふくしまの伝統文化を伝え、故郷の魅力を発信するために
本県では約 30 年にわたって転出者数が転入者数を上回る「転出超過」が続いており、これは地域に古くから根付く伝統文化の存続に関わる問題です。人口の減少と流出が顕著だからこそ、こうした火を絶やさずに次代へつないでいく工夫が求められます。
それは、当地の伝統文化の魅力を地域内外の人々に伝えて関心を高め、持続的な発展につなげるための取り組みです。
われわれは創意と熱意を持って地域の宝を守り、次代へ歴史を紡ぐための事業を展開します。
福島わらじまつりの持続的な発展に向けて
福島青年会議所が長年携わってきた「福島わらじまつり」は 2019 年の第 50 回開催で大幅なリニューアルを果たしました。担ぎ、演舞、演奏の全てで市民参加型のまつりを標榜し、二度の国際博覧会への出演などを通じて、確実に認知度を高めてきました。
しかし、まつりの根幹に携わる方々の高齢化、将来の担い手である子どもたちの巻き込み不足など、持続的な発展に向けた課題は山積しています。さらに、東北絆まつりに参画する東北 6 県の夏祭りのうち、2024 年の福島わらじまつりは経済効果(28 億円)、入り込み客数(30 万人)のいずれも最下位に甘んじており、一層の盛り上がりを実現するための創意工夫が求められています。
伝統を守るための課題を解決し、進化させながら次代へつなぐ。福島青年会議所は地域とともに、この難題に挑戦します。
人が育ち、組織が磨かれる運動体へ
青年会議所の原動力は人であり、仲間の存在にほかなりません。私たちが地域に運動を展開していく上で、会員拡大は不可欠な使命です。新たな仲間を迎え入れることは、組織の活力を保つだけでなく、より多様な視点と発想を組織にもたらし、事業の質を高める原動力となります。2026年度は 20 人の会員拡大を掲げ、運動と活動を展開します。
一方、単に人数を増やすだけでは十分とは言えません。迎え入れた会員一人ひとりが「地域の未来を担う自分自身である」という主体的な意識と実行力を備えてこそ、青年会議所の本質的な価値は発揮されます。そのためには、入会後の学びや実践の機会を通じてメンバーの資質向上に取り組むことが不可欠です。
その中でも、例会は極めて重要な位置づけにあります。例会は単なる会合ではなく、運動の方向性を確認し合い、地域課題に向き合う意識を高め、そして会員同士が相互に学び合う機会として機能すべきものです。とりわけ、例会を通じて「伝える力」「考える力」「協働する力」を養うことは、青年会議所ならではの人財育成の土台となります。参加するだけでなく、企画・設営・登壇といった能動的な関わりこそが、会員一人ひとりの成長の糧となっていくのです。
また、こうした人財育成や拡大活動を支えるためにも、効率的かつ透明性のある組織運営の確立は欠かせません。一人ひとりが役割と責任を持ちつつも、支え合いながら事業を推進できるような、風通しの良い運営体制を目指してまいります。組織がしなやかに機能してこそ、人が育ち、運動が力強く前進していくのです。
災害対応のリーダーの育成に向けて
本県は 2011 年の東日本大震災以降も度重なる地震災害、豪雨災害に見舞われてきました。われわれは地域のリーダーとして有事の際に率先して災害対応に当たる役割を求められており、近年の気候変動も相まって、災害に対する知識の習得と備えはなお重要度を増しております。
「万が一」の際に最適な行動を選択、実行できる組織づくりに向け、メンバーの災害対応能力の向上を目指し、防災・減災に関する学びの機会を創出します。
結びに
私が初めて青年会議所の門を叩いたのは、社会人 2 年目の 2012 年 4 月です。前職の企業出向という形で原町青年会議所に入会しましたが、当初は青年会議所の理念が理解できず、ただ所属しているだけの不良会員でした。
原町青年会議所が拠点を置く南相馬市は当時、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故の被害により、まち全体が混沌とした状況にありました。県内最多の 636 人が津波で亡くなった上、原発事故に伴う全ての線引きが設定された県内唯一の自治体でした。同じ市民でありながら住所によって原発事故の賠償額が異なる不公平感が蔓延し、多大な津波の犠牲も相まって、住民間の感情の軋轢がはびこるまさに先行きが見えないまちだったのです。私自身、当時の職務の多忙さと精神的なストレスから、日々、心身ともに疲弊していたことを覚えています。
そんな私を救ってくれたのは、当時の原町青年会議所のメンバーでした。社業や家族を含め、自身の生活すべてに不安を感じるような未曽有の環境下にありながらも、ふるさとの復興に向けてJC 運動、活動に日々取り組む先輩方の姿は、私の意識を変えていきました。多忙さやストレスを周辺環境のせいにしていた自分にとって、少なくとも私より大変な状況にありながら真摯にまちの課題に向き合う JAYCEE の生き様は、圧倒的なまぶしさを持って私の幼稚さをねじ伏せたのです。
「社業だけでなく、人間として JC の先輩方と肩を並べられるようになりたい」。この意識変革の経験が、いまに通じる私の青年会議所での原体験です。
震災と原発事故から十数年が過ぎ、全県で復興は途に就きましたが、時代は大きな転換点を迎えており、地域の課題はますます複雑さを増しています。そんな今だからこそ、私たち青年会議所が地域の未来に向けて真摯に問い、行動し、運動を展開していく意義はより一層大きなものとなっています。
古代中国の思想家・孔子は、その生涯を振り返り「十五にして学を志し、三十にして立ち、四十にして惑わず」と語りました。彼の言行をまとめた「論語」は、己の使命に目覚め、学びを積み、確固たる信念を持って世に立った道筋を示しています。
私自身、これまでの青年会議所での経験を経てまさに「惑わず」の年を目前としております。地域の課題に真摯に向き合い、仲間とともに変革を起こす覚悟は、これまでの歩みがあってこそ生まれたものです。組織運営の在り方や事業の細部の方向性について時に迷い、悩むことがあっても、まちの発展に向けた運動の完遂という決意においては一点の「惑い」もありません。
先達が自らの道を信じ、苦難にあっても学び続けたように、私もまた、生まれ育ったふくしまの青年会議所で理事長職を務められる幸せを噛みしめながら、揺るぎない志でこの一年を歩み抜きます。そしてその歩みが、明るい未来を切り拓く確かな一歩となることを願っております。
人は、自分が決意した分だけ、幸せになれるものだ。
第 16 代アメリカ合衆国大統領
エイブラハム・リンカーン